ホンダナノスキマ

本棚の隙間です。

レヴュー

『逆流主婦ワイフ』はそこで淀んでいるわけにはいかない

逆流主婦ワイフ 1 (ビームコミックス) 作者:イシデ電 KADOKAWA Amazon 僕は家事が好きだ。料理のレパートリーが豊富というわけでもないし、家のなかが常にピカピカかといえばそうでもないから、好きというと語弊があるかもしれないが、炊事洗濯掃除など家事…

『橙は、半透明に二度寝する』あと5分だけ

橙は、半透明に二度寝する(1) (週刊少年マガジンコミックス) 作者:阿部洋一 講談社 Amazon 少女たちは、少しささくれた線で描かれる。明暗のきわ立つその絵は、一見して版画のような堅い印象を受ける。しかし同時に、どこかやわらかな感触もともなうふし…

『幸福はアイスクリームみたいに溶けやすい』のはなぜなのか

幸福はアイスクリームみたいに溶けやすい 作者:黒谷 知也 電書バト Amazon 結婚式の前々日に、彼女は自ら命を断った――。その理由を探しもとめる婚約者を描いた表題作「幸福はアイスクリームみたいに溶けやすい」ほか、12の短編が収録された一冊。ほとんど用…

『運命の女の子』の手をとって

運命の女の子 (アフタヌーンコミックス) 作者:ヤマシタトモコ 講談社 Amazon 赤いぼうしと青いオーバーオールで身を飾る髭の男をあやつりながら、ときおり現れる星を手に入れ、なにものをも寄せつけないキラキラ瞬く体となって、けれど刹那で終わってしまう…

『夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない』けれど

夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない (モーニングコミックス) 作者:宮崎夏次系 講談社 Amazon ある雨の日に、かわいい系のおじさんであるところの僕が、ダンボール箱に入れられて、道端に捨てられていたとしよう。通りかかったあなたは、僕をひと目…

『誰も懲りない』と月見バーガーについての話

誰も懲りない 作者:中村珍 太田出版 Amazon たとえば「月見バーガーの季節」のように、日々を生活していくなかで、その到来を待ち望んでいるものがいくつかあります。「中村珍のストーリー漫画」も、そのうちのひとつでありまして。というわけで、先ごろ単行…

『人生は二日だけ』だとしても

人生は二日だけ (RYU COMICS) 作者:堤谷菜央 徳間書店(リュウ・コミックス) Amazon よくある自問。「私はなぜ生まれてきたのか」。 思うところはあるのだけれど、ときによって違ったり、ときには複数だったり、これだという答えをまだ見つけられずにいる。…

『さんかく窓の外側は夜』もふけて

さんかく窓の外側は夜 1 (クロフネコミックス) 作者:ヤマシタトモコ リブレ Amazon 「見ざる聞かざる言わざる」という言葉がある。「自分を惑わすようなもの、あるいは他人の欠点などは、見ない聞かない言わないのが賢明である」という意味で使われるのが一…

『林檎の木を植える』のは明日も今日であるように

林檎の木を植える (マーガレットコミックス) 作者: 志村志保子 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2013/09/25 メディア: コミック この商品を含むブログ (3件) を見る 何かを変化させたことに対する賞賛の声は、しばしば耳にする。何かを変えるというのは相当…

『宝石の国』に生きる彼らの価値は

宝石の国(1) (アフタヌーンコミックス) 作者:市川春子 講談社 Amazon 6度訪れた流星により、6度欠け6個の月を産み痩せ衰えた星。その海のなかで、長い時をかけ結実した宝石生命体28人。 彼らを装飾品とするために幾度となく飛来する月人(つきじん)との…

『人魚のうたがきこえる』と僕の間に残されたもの

人魚のうたがきこえる (こどもプレス)作者:五十嵐大介イースト・プレスAmazonまわりをサンゴに守られたラグーンのなかで暮らす人魚たち。その上半身は人間のようで、下半身はマンタのようだ。泳ぐウミガメの背につかまって遊び、鋭く伸びた爪で獲物を狩り、…

『就職難!! ゾンビ取りガール』のリアリティ

就職難!! ゾンビ取りガール(1) (モーニングコミックス)作者:福満しげゆき講談社Amazon今の子たちはどうなのか知りませんが、僕が学生のころ、テレビゲームや漫画に対する褒め言葉のひとつに、「リアルだ」というのがありまして。その「リアル」というの…

『あんずのど飴』はふたりで過ごした日々の証

あんずのど飴作者:冬川智子サイバーブックスAmazon高校生のころ、将来のことをしっかり考えましょうとよく言われた。僕は、そうしたほうがよいのだろうなと思いつつも、将来の自分ではなく、今の僕のことを考えるので精一杯だった。僕とはなんだろうとか、そ…

『箱庭ヘブン』のやさしい無頓着

箱庭ヘブン(1) (BE LOVE KC)作者:羽柴 麻央講談社Amazon浅利さんのお屋敷には、様々な人が暮らしている。自分のことを「あたし」と呼び、「~だわ、~なのよ」といった語尾で話す男性、ローズ。浅利の知人の娘、憩。わけあってお屋敷で暮らす典(5歳)と妹の…

『変身のニュース』が眩しい理由

変身のニュース (モーニングコミックス)作者:宮崎夏次系講談社Amazon『変身のニュース』には、雲になりたいと願う妹とその兄たち、死んだ恋人から送られてくる奇妙なプレゼントを受けとる女性、57回に及ぶ人工臓器の入れ替えで生きながらえながら「パパより…

『空が灰色だから』という白でも黒でもない話

空が灰色だから 1 (少年チャンピオン・コミックス)作者:阿部共実秋田書店Amazon白黒つけるという言葉があるけれど、その是非を明確に判断できる事柄なんて世のなかにはそうそうない。朝食はパンにしようかお米にしようか、右に行こうか左に行こうか、進学し…

『羣青』という漫画について

羣青 上 (IKKI COMIX)作者:中村珍小学館Amazonなにがしかの物語が綴られている作品と対峙したとき、そこで描かれる世界に対し、僕はどう関わっているんだろうかと、映画や小説や漫画といった媒体の違いによって、関わり方も変わってくるんだろうかと、いつも…

『かわいそうな真弓さん』を読んで僕とダンス!

かわいそうな真弓さん作者:西村ツチカ太田出版Amazon見たことのない構図で描かれた、ここではないどこかとしての世界。ときに歪んだデッサンで過剰にデフォルメされた、僕らではない彼らとしてのキャラクターたち。西村ツチカの創りだす世界とソコで暮らす人…

『寿司ガール』は女の鏡

寿司ガール 1巻 (バンチコミックス)作者:安田 弘之新潮社Amazon 看護師の夢を諦めた女王様。 時間を埋めることに懸命なOL。 尖った言葉でしか人と接せられない女教師…。 頭の上に寿司ネタを乗っけた 謎の「寿司ガール」に出会った女達は、 少しだけ人生が…

『水域』に落ちるしずくで湛えられていく、私という人生

水域(上) (アフタヌーンコミックス)作者:漆原友紀講談社Amazon給水制限の続く猛暑の夏休み、中学校の水泳部に所属する川村千波は、炎天下のグラウンドでの練習中に、暑さで気を失ってしまう。目を覚ますと、そこは雨の降る河原。水を欲していた千波は川へ…