ホンダナノスキマ

本棚の隙間です。

『あんずのど飴』はふたりで過ごした日々の証

あんずのど飴作者:冬川智子サイバーブックスAmazon高校生のころ、将来のことをしっかり考えましょうとよく言われた。僕は、そうしたほうがよいのだろうなと思いつつも、将来の自分ではなく、今の僕のことを考えるので精一杯だった。僕とはなんだろうとか、そ…

『箱庭ヘブン』のやさしい無頓着

箱庭ヘブン(1) (BE LOVE KC)作者:羽柴 麻央講談社Amazon浅利さんのお屋敷には、様々な人が暮らしている。自分のことを「あたし」と呼び、「~だわ、~なのよ」といった語尾で話す男性、ローズ。浅利の知人の娘、憩。わけあってお屋敷で暮らす典(5歳)と妹の…

『変身のニュース』が眩しい理由

変身のニュース (モーニングコミックス)作者:宮崎夏次系講談社Amazon『変身のニュース』には、雲になりたいと願う妹とその兄たち、死んだ恋人から送られてくる奇妙なプレゼントを受けとる女性、57回に及ぶ人工臓器の入れ替えで生きながらえながら「パパより…

『空が灰色だから』という白でも黒でもない話

空が灰色だから 1 (少年チャンピオン・コミックス)作者:阿部共実秋田書店Amazon白黒つけるという言葉があるけれど、その是非を明確に判断できる事柄なんて世のなかにはそうそうない。朝食はパンにしようかお米にしようか、右に行こうか左に行こうか、進学し…

『羣青』という漫画について

羣青 上 (IKKI COMIX)作者:中村珍小学館Amazonなにがしかの物語が綴られている作品と対峙したとき、そこで描かれる世界に対し、僕はどう関わっているんだろうかと、映画や小説や漫画といった媒体の違いによって、関わり方も変わってくるんだろうかと、いつも…

『きみの家族』の軽やかな愛情

きみの家族 (芳文社コミックス)作者:サメマチオ芳文社Amazon『きみの家族』では、平山家という家族から、結婚のために姉が、大学進学のために弟が実家を離れていく様子が描かれている。四人家族の平山家だが、もちろん最初は父と母のふたりだけであり、姉が…

『町でうわさの天狗の子』の強固な日常

町でうわさの天狗の子(9) (フラワーコミックスα)作者:岩本ナオ小学館Amazon「年上好きのお母さんは夏祭りの夜に450歳年上のお父さんと恋に落ちた。」という冒頭の一節。500年近く生きている天狗のいる世界、つまり読者のそれとは違う世界が描かれているの…

『ぼくらのよあけ』で語られる強くしなやかな生きかたとは

ぼくらのよあけ(1) (アフタヌーンコミックス)作者:今井哲也講談社Amazonこの作品は、沢渡悠真をはじめとする子供たちが、自分の星へ戻ることができなくなってしまった探査船「二月の黎明」号を宇宙へ帰そうと奮闘するなかで成長していくという物語だ。 地…

『かわいそうな真弓さん』を読んで僕とダンス!

かわいそうな真弓さん作者:西村ツチカ太田出版Amazon見たことのない構図で描かれた、ここではないどこかとしての世界。ときに歪んだデッサンで過剰にデフォルメされた、僕らではない彼らとしてのキャラクターたち。西村ツチカの創りだす世界とソコで暮らす人…

『寿司ガール』は女の鏡

寿司ガール 1巻 (バンチコミックス)作者:安田 弘之新潮社Amazon 看護師の夢を諦めた女王様。 時間を埋めることに懸命なOL。 尖った言葉でしか人と接せられない女教師…。 頭の上に寿司ネタを乗っけた 謎の「寿司ガール」に出会った女達は、 少しだけ人生が…

『水域』に落ちるしずくで湛えられていく、私という人生

水域(上) (アフタヌーンコミックス)作者:漆原友紀講談社Amazon給水制限の続く猛暑の夏休み、中学校の水泳部に所属する川村千波は、炎天下のグラウンドでの練習中に、暑さで気を失ってしまう。目を覚ますと、そこは雨の降る河原。水を欲していた千波は川へ…

『虫と歌』とヒトと言葉と

虫と歌 市川春子作品集 (アフタヌーンコミックス)作者:市川春子講談社Amazonたとえば、外見も中身もヒトにほど近いロボットのようなものができたとして。それが言う「あなたを愛しています」と、ヒトの言う「あなたを愛しています」の、それぞれの「愛」の間…

『モテキ』に移ろう、君の中の俺

モテキ(4) (イブニングコミックス)作者:久保ミツロウ講談社Amazon自分のことや誰かのことを想うというのは、たとえば空に浮かぶ雲を見て、「何の形に見える?」と問いかけるのと同じだ。小宮山夏樹の言葉。

『ヒメアノ~ル』とは誰の物語だったのか

ヒメアノ~ル(6) (ヤングマガジンコミックス)作者:古谷実講談社Amazon古谷実の7作目にあたる、『ヒメアノ~ル』が完結した。この作品を、5作目『シガテラ』、6作目『わにとかげぎす』に見られる「ごく一般的な小市民である主人公のタナボタ的な恋愛を含む…

はじめに

はじめに 本棚は、いつも漫画でいっぱいです。 冊数が増えるたび、どうやって詰め込もうかと悩みます。それでも、僕の本棚には隙間があります。読み終えた作品についてなにか書くことで、それが埋まればいいなと思っています。 ブログについて 読んだマンガ…