ホンダナノスキマ

本棚の隙間です。主に漫画の感想です。

『ふたがしら』が描く王道

ふたがしら 第1集 (IKKI COMIX)

ふたがしら 第1集 (IKKI COMIX)

すでに第二巻まで発売されている『ふたがしら』。ざっとあらすじを追ってみましょう。

時は江戸。盗みを生業とする赤目一味に身を寄せる弁蔵と宗次は、頭目の死に立ち会う。ふたりの手を取り「一味のこと、まかせた。」と言い残し息を引き取る頭目。しかし一味の跡目となったのは、頭目の弟分である甚三郎。納得のいかない弁蔵と宗次は一味を離れ、「でっかいことをやる」ため旅に出る。

大阪を目指し江戸を発つふたり。裏で盗賊宿としての役を担う旅籠の主人と出会ったり。賊に討たれた役人から託されたあるものを届けるため、わざわざ江戸へ取って返したり。それを見ていた男たちに、子分にしてくれと請われたり。ようやく辿り着いた大阪で、修行を積ませてくれないかと、赤目一味の前頭目と交流のあった夜坂一味の頭の元を尋ねたふたりだが……。


一味の頭目、でっかいことをやる、手下、修行……なんというか、少年マンガかと見紛うようなあらすじです。また、情に厚く真っ直ぐな主人公たち、盗賊宿の”いき”な主人、色気たっぷりな悪女としての姐さん、修行先の貫禄ある元頭目といったキャラクターたちも、少年マンガとしてそのまま使えそうな設定です。しかし、この作品は少年マンガではありません。

『ふたがしら』と少年マンガを隔てる要素のひとつに、音の使い方が挙げられると思います。少年マンガでは、キャラクターによる決め台詞の多くは大きな声で発せられますし、その背後には、たとえば「どん!」といったような効果音も配置されます。また、それが決め台詞である理由もト書き等によって充分に説明されます。

一方の『ふたがしら』ですが、この作品(というかオノ・ナツメ作品全般)では、台詞も擬音も書かれていない無音のコマが多用されます。無音の場面ということではなく、実際には鳴っているであろう音が文字によって示されていないということです。また、台詞自体も必要最低限しか使われず、登場人物の心情や背景といったあれこれをト書きで説明することはしていません。

そういった静かな紙面からさまざまな情報を読みとろうと、『ふたがしら』の読者は常に耳をすましています。だから大声で喚かなくても、大仰な効果音を使わなくても、彼らの発する言葉は読者に深く響き渡ります。この作品は、そういうオノ・ナツメ先生の作風と、王道なストーリが見事にマッチした名作だと思うのです。


ということで、オノ・ナツメ先生による青少年のための王道、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか!!!(どん!!!)


※「王道」という言葉には「安易な方法」や「近道」といった意味もありますが、今回は「正攻法」や「定石」というような意味で使っています。