『人生は二日だけ』だとしても
よくある自問。「私はなぜ生まれてきたのか」。
思うところはあるのだけれど、ときによって違ったり、ときには複数だったり、これだという答えをまだ見つけられずにいる。思うところはあるのだけれど。
堤谷菜央の初単行本となる『人生は二日だけ』。
月刊COMICリュウの新人コンペ「第12回龍神賞」で、リュウが創刊されて以来初めて「金龍賞」を受賞した作品となったデビュー作「バースデイ」ほか、ある姉弟の暮らす部屋に突然現れた少女との交流を描く表題作「人生は二日だけ」、兄の幽体に手を差し伸べたことから”お兄ちゃん憑き”となった少女を描く「兎の生る木」、”シューカツ”や親の再婚に翻弄される少年と少女を描く「ライトナイトライト」など、全6篇が収録された短編集。
続きを読む『さんかく窓の外側は夜』もふけて
「見ざる聞かざる言わざる」という言葉がある。「自分を惑わすようなもの、あるいは他人の欠点などは、見ない聞かない言わないのが賢明である」という意味で使われるのが一般的なようだ。
僕はこの言葉に対し、もっともだと思う一方で「臭いものに蓋」に似た印象も持っている。自分を惑わすようなもの、あるいは他人の欠点であっても、ときには向き合うことがあってもいいと思うからだ。
続きを読む『町でうわさの天狗の子』を「自分だけは助けてやれる」理由とは
いつもと同じ平素な時間のことを、日常と呼ぶ。その始まりは、とても小さな範囲でしかない。一歩踏み出せば、そこはもう非日常だ。
たとえば母親とふたりでいる空間のような、安心を約束してくれるその小さな小さな日常を拠点として、非日常である外の世界にふれながら、日常と呼ぶことのできる範囲を少しずつ広げていく。通う学校にいる気の置けない友人も、もとは別の日常を拠りどころにしていた他人であり、少しずつ広がるそれぞれの日常を重ね合わせることで、お互いを自身の日常の中に組み入れていくのだ。
続きを読む『ぼくらのゆくえは』という関係性
29歳の朝海雪夫は漫画家だが、初の連載作品が打ち切られて以来、ネームを通すことができず、自分がなにを描きたかったのかも見失い、この2年間はペンも持たずにコンビニのアルバイトで生活している。
そんな朝海の暮らすアパートの隣室に引っ越してきた、18歳の花山入花。彼女は、大学の仲間たちと運営する劇団の初公演への出演に向け、大はりきりだった。
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