ホンダナノスキマ

本棚の隙間です。

2014-01-01から1年間の記事一覧

『第七女子会彷徨』の中の「徨彷会子女七第」

第七女子会彷徨(7) (RYU COMICS) 作者:つばな 徳間書店(リュウ・コミックス) Amazon 女子高生の金やんと高木さんが過ごす、すこしふしぎな日常が一話完結の形式で綴られてきた『第七女子会彷徨』。その7巻に、「幾重不明回廊」という初の長編が収録された…

『惡の華』のおしまいによせて

惡の華(11) (週刊少年マガジンコミックス) 作者:押見修造 講談社 Amazon 押見修造の漫画作品である『惡の華』が、この十一巻をもって完結した。最初の単行本から一貫して「この漫画を、今、思春期に苛まれているすべての少年少女、かつて思春期に苛まれ…

『夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない』けれど

夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない (モーニングコミックス) 作者:宮崎夏次系 講談社 Amazon ある雨の日に、かわいい系のおじさんであるところの僕が、ダンボール箱に入れられて、道端に捨てられていたとしよう。通りかかったあなたは、僕をひと目…

『ちーちゃんはちょっと足りない』で溢れだしたもの

ちーちゃんはちょっと足りない (少年チャンピオン・コミックス・エクストラ もっと!) 作者:阿部共実 秋田書店 Amazon その友人の旭の言を借りれば、「言葉や考えが足りない」ちーちゃんこと南山千恵、中学2年生。社会科のテストで23点をたたき出して歓喜の…

『ノストラダムス・ラブ』イズ・オーヴァー

ノストラダムス・ラブ (IKKI COMIX) 作者:冬川智子 小学館 Amazon 1999年7の月、空から恐怖の大王が降ってきて、地球は滅亡する――。 幼少時からノストラダムスの大予言にふれて育ち、「あたしが19歳になったら、せかいがおわる。しぬ。」と思い込んでいる村…

『誰も懲りない』と月見バーガーについての話

誰も懲りない 作者:中村珍 太田出版 Amazon たとえば「月見バーガーの季節」のように、日々を生活していくなかで、その到来を待ち望んでいるものがいくつかあります。「中村珍のストーリー漫画」も、そのうちのひとつでありまして。というわけで、先ごろ単行…

『千年万年りんごの子』という神話に結ばれた約束と果実

千年万年りんごの子(3) (ITANコミックス) 作者:田中相 講談社 Amazon 生まれてまもなく寺の縁側に捨てられたという過去をもつ雪之丞は、大学を出てすぐに、雪国のりんご農家に婿入りする。慣れない農作業や、田舎特有の他人との距離の近さに戸惑いな…

『人生は二日だけ』だとしても

人生は二日だけ (RYU COMICS) 作者:堤谷菜央 徳間書店(リュウ・コミックス) Amazon よくある自問。「私はなぜ生まれてきたのか」。 思うところはあるのだけれど、ときによって違ったり、ときには複数だったり、これだという答えをまだ見つけられずにいる。…

『さんかく窓の外側は夜』もふけて

さんかく窓の外側は夜 1 (クロフネコミックス) 作者:ヤマシタトモコ リブレ Amazon 「見ざる聞かざる言わざる」という言葉がある。「自分を惑わすようなもの、あるいは他人の欠点などは、見ない聞かない言わないのが賢明である」という意味で使われるのが一…

『バベルの図書館』に記されていない言葉を探せ

バベルの図書館 作者:つばな 太田出版 Amazon 年若いころ、多分にもれず「ここではないどこか」に焦がれて、ひとつ気づいたことがある。「ここ」を見る自身の瞳に反射した鏡像が、「どこか」へ抜け出すための扉なのだ。 しかし、それを自分で見ることはでき…

『町でうわさの天狗の子』を「自分だけは助けてやれる」理由とは

町でうわさの天狗の子(12) (フラワーコミックスα) 作者:岩本ナオ 小学館 Amazon いつもと同じ平素な時間のことを、日常と呼ぶ。その始まりは、とても小さな範囲でしかない。一歩踏み出せば、そこはもう非日常だ。 たとえば母親とふたりでいる空間のよう…