ホンダナノスキマ

本棚の隙間です。

2013-01-01から1年間の記事一覧

『ぼくらのゆくえは』という関係性

ぼくらのゆくえは (マーガレットコミックスDIGITAL) 作者:渡辺カナ 集英社 Amazon 29歳の朝海雪夫は漫画家だが、初の連載作品が打ち切られて以来、ネームを通すことができず、自分がなにを描きたかったのかも見失い、この2年間はペンも持たずにコンビニのア…

『林檎の木を植える』のは明日も今日であるように

林檎の木を植える (マーガレットコミックス) 作者: 志村志保子 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2013/09/25 メディア: コミック この商品を含むブログ (3件) を見る 何かを変化させたことに対する賞賛の声は、しばしば耳にする。何かを変えるというのは相当…

『羣青』のメガネさんが風邪を引き続けた理由

羣青 下 (IKKI COMIX) 作者:中村珍 小学館 Amazon 一年と少し前、『羣青』という漫画について、僕は感想文を書きました。読み終えた勢いそのままに(けれど最終巻が発売されて間もない時期だったためネタバレを避けつつ)書いたので、内容にはほとんどふれず…

『アリスと蔵六』について思っていること

アリスと蔵六(1) (RYU COMICS) 作者:今井哲也 徳間書店(リュウ・コミックス) Amazon 自分の想像したものをなんでもひとつだけ現実にしてしまうことができる、”トランプ”という特殊な能力を持った特異能力者たち。”アリスの夢”と呼ばれる彼らを管理する研究…

『放浪息子』はどこまでも

放浪息子15 (ビームコミックス) 作者:志村 貴子 KADOKAWA Amazon 今からちょうど10年前に、『放浪息子』の第1巻が発売された。それから今日まで、二鳥修一を見続けた。巻を重ねるにつれ、彼の身体的な成長にともなう骨格や肉付きの変化が、迷いのない(よう…

『宝石の国』に生きる彼らの価値は

宝石の国(1) (アフタヌーンコミックス) 作者:市川春子 講談社 Amazon 6度訪れた流星により、6度欠け6個の月を産み痩せ衰えた星。その海のなかで、長い時をかけ結実した宝石生命体28人。 彼らを装飾品とするために幾度となく飛来する月人(つきじん)との…

『ひばりの朝』を迎えて

ひばりの朝 (1) (FEEL COMICS)作者:ヤマシタトモコ祥伝社Amazonすぐに忘れてしまうのです。この作品のタイトルが、『ひばりの朝』だということを。すぐに見失ってしまうのです。この作品は、朝を待つひばりの話だということを。

『私という猫 ~呼び声~』と私について

私という猫 ~呼び声~ (バーズコミックス スペシャル)作者:イシデ電幻冬舎コミックスAmazon 知らなかっただろ どんなやつらが どんな場所で どんなふうに生きているか 自分がどんな世界にいるのか知りもしないで どうやってひとりで生きていくんだよ ひとり…

『人魚のうたがきこえる』と僕の間に残されたもの

人魚のうたがきこえる (こどもプレス)作者:五十嵐大介イースト・プレスAmazonまわりをサンゴに守られたラグーンのなかで暮らす人魚たち。その上半身は人間のようで、下半身はマンタのようだ。泳ぐウミガメの背につかまって遊び、鋭く伸びた爪で獲物を狩り、…

『オンノジ』という世界の歩き方

オンノジ (ヤングチャンピオン・コミックス)作者:施川ユウキ秋田書店Amazon突然人がいなくなった世界で、ひとりきりになった少女ミヤコ。彼女は誰もいない街をさまよいながら、世界の可笑しさや、誰もいなくなったことによって露見する世界の滑稽さに、呑気…

『就職難!! ゾンビ取りガール』のリアリティ

就職難!! ゾンビ取りガール(1) (モーニングコミックス)作者:福満しげゆき講談社Amazon今の子たちはどうなのか知りませんが、僕が学生のころ、テレビゲームや漫画に対する褒め言葉のひとつに、「リアルだ」というのがありまして。その「リアル」というの…

『もやしもん』のかもし出す笑顔

もやしもん(12) (イブニングコミックス)作者:石川雅之講談社Amazonたとえば、今の時期なら出勤時に目の端でとらえる桜を、ほんとうは時間をかけて眺めていたいと思うのですが、そうすると遅刻してしまうから、それが続けば解雇されてしまうから、お賃金…

『よつばと!』素晴らしきこの世界

よつばと!(12) (電撃コミックス)作者:あずま きよひこKADOKAWAAmazon『よつばと!』という漫画を読むとき、僕はなんというか、とても第三者だ。この作品が成り立っている世界の景色から受ける印象は、僕が見ている現実の世界から受けるそれと同じだ。よつばた…

『無限の住人』で繋がれた願いと右手

無限の住人(30) (アフタヌーンコミックス)作者:沙村広明講談社Amazon19年間に渡って連載されていた『無限の住人』が、30巻をもって完結した。読者として、24・25巻あたりから結末を強く意識し始め、新しい単行本を読むたびに、この作品はどういう終わり…

『あんずのど飴』はふたりで過ごした日々の証

あんずのど飴作者:冬川智子サイバーブックスAmazon高校生のころ、将来のことをしっかり考えましょうとよく言われた。僕は、そうしたほうがよいのだろうなと思いつつも、将来の自分ではなく、今の僕のことを考えるので精一杯だった。僕とはなんだろうとか、そ…

『箱庭ヘブン』のやさしい無頓着

箱庭ヘブン(1) (BE LOVE KC)作者:羽柴 麻央講談社Amazon浅利さんのお屋敷には、様々な人が暮らしている。自分のことを「あたし」と呼び、「~だわ、~なのよ」といった語尾で話す男性、ローズ。浅利の知人の娘、憩。わけあってお屋敷で暮らす典(5歳)と妹の…