ホンダナノスキマ

本棚の隙間です。

『第七女子会彷徨』の中の「徨彷会子女七第」


第七女子会彷徨(7) (RYU COMICS)

第七女子会彷徨(7) (RYU COMICS)

  • 作者:つばな
  • 徳間書店(リュウ・コミックス)
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女子高生の金やんと高木さんが過ごす、すこしふしぎな日常が一話完結の形式で綴られてきた『第七女子会彷徨』。その7巻に、「幾重不明回廊」という初の長編が収録された。

「鏡がワンテンポ遅れて映る」。それが幕開けだった。世界中の鏡像が、突如として遅れ始める。そこに映るはずの自分と異なる鏡像は、もうひとりの自分を想起させる。そして、こちら側よりもゆっくり進む鏡像に、時空のずれたもうひとつの世界が思い浮かぶ。

今、僕の目のまえにある世界に対するもうひとつの世界があるとしたら、それはなんだろうと考えてみる。無限に広がる宇宙としての、この世界に対するもうひとつの世界。

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『惡の華』のおしまいによせて

押見修造の漫画作品である『惡の華』が、この十一巻をもって完結した。最初の単行本から一貫して「この漫画を、今、思春期に苛まれているすべての少年少女、かつて思春期に苛まれたすべてのかつての少年少女に捧げます。」とカバーに記しつづけた作者が紡いだ物語。

その結末にはなにが描かれていたのか。

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『夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない』けれど

ある雨の日に、かわいい系のおじさんであるところの僕が、ダンボール箱に入れられて、道端に捨てられていたとしよう。通りかかったあなたは、僕をひと目見て拾いたいという衝動に駆られるが、おじさんを飼ってはいけないアパートに住んでいるので、近くのコンビニで急ぎ買った牛乳と、自分が差していた傘だけ置いて、そこを足早に立ち去るのだ。

僕はさみしさに包まれる。「置いて行かれた」というさみしさに。拾わないならほかになにもされたくないから、差された傘を打ち捨て、牛乳には手をつけない。そして翌日、また同じ道を通ったあなたも、打ち捨てられた傘と未開封の牛乳を見て、さみしさに包まれる。「私の愛が届いていない」というさみしさに。

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『ちーちゃんはちょっと足りない』で溢れだしたもの

その友人の旭の言を借りれば、「言葉や考えが足りない」ちーちゃんこと南山千恵、中学2年生。社会科のテストで23点をたたき出して歓喜のダンスを踊ったり、日曜朝アニメのグッズのガチャガチャがやりたくて、やっと覚えた九九(間違えてる)を披露しながら姉に200円をねだったり。

もうひとりの友人である小林ナツは、「フリーソフトをインストール」と聞いて「首に巻くストールとパソコンにどんな関係が?」と返したりして、またまた旭の言を借りれば、「千恵の陰に隠れてけっこういかつい」。

学業や恋に悩みながらも笑い合いながら過ぎていく、そんな女子中学生3人のほのぼのとした日常が綴られる――と思いきや。

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『ノストラダムス・ラブ』イズ・オーヴァー

1999年7の月、空から恐怖の大王が降ってきて、地球は滅亡する――。

幼少時からノストラダムスの大予言にふれて育ち、「あたしが19歳になったら、せかいがおわる。しぬ。」と思い込んでいる村山桜は、1999年、大学2年生の夏休みをむかえていた。世界の終りまであと10日足らずとなった日、桜の住むアパートの隣人である森に交際を申し込まれ、「世界の終わりを一緒に迎える人」として、彼と付き合うことになる。

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